【外国人採用の現場から見えること】①外国人材の需要が高まっている理由とは
少子高齢化によって労働力人口が減り、人手不足が騒がれている今、外国人材が労働者として注目されています。
私たちが働いている東京都心では、コンビニエンスストアやチェーンの飲食店で働く外国の方(以下「外国人」という)を多く見かけます。店舗によっては、日本人が一人もいないということも珍しくありません。
そこで、既に外国人を採用されている企業様や、これから採用を検討される方々へ、“外国人材の採用”についてシリーズでお話をしていきたいと思います。
1回目となる今回は、日本の労働力人口の現状やその背景を確認し、なぜ外国人材を採用する必要性が高まっているのかを見ていきます。
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「日本に滞在できる=働くことができる」わけでは無い
冒頭でもお話しした通り、人手不足を解消するための一つとして、多くの外国人が日本全国で働いています。
現在日本に長期滞在(3ヵ月以上)している、何らかの在留資格を持っている外国人の総数は約264万人。その内訳は以下の通りです。
- 永住者:約76万人
- 特別永住者:33万人
- 留学生:約32万人
- 技能実習:約29万人
- 就労目的(技術・人文知識・国際業務):約22万人
- 定住者:約19万人
- 日本人配偶者:約17万人
- 家族滞在:約14万人
- 高度専門職ほか:約3万人
- その他:19万人
上記はあくまで“日本にいることができる”外国人の人数であり、その全ての方が働いているわけではありません。日本国内で労働者として働いているのは、約半数である130万人程度。外国人が日本で働くには在留資格が必要となるためです。
それらは現在33種類に分かれており、日本人となんら変わらず働ける資格から、働ける職種や時間などが決められている資格もあります。
(これらの在留資格については、今後詳しくお話をしていきます。)
このような条件を持つ、日本人よりも採用のハードルが高い外国人材を採用しないといけないほどに、日本の人材不足は深刻なのでしょうか?
参照:法務省「平成30年6月末現在における在留外国人数について」
日本の労働力人口の現状とは
確かに地方では若者が都心部へ進学、就職を機に出て行ってしまい、高齢者のみがそのまま住み続けているという地域が多くあるのは現実です。
とはいえ、東京をはじめとする都心部には全国から人が集まっており、国外からも多くの方が移り住んできます。
そもそも本当に人手不足なのか、疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか?
上記は、平成17年と27年時点の65歳以上人口割合を表した地図です。
緑の地域は65歳以上人口の割合が30%未満の地域を表しています。黄色、ピンク、赤と、赤みが増すにつれ、その割合は増えていきます。
平成27年の、ごく一部のかろうじて青色(65歳以上の人口が20%未満の地域)となっている部分は、新幹線の線路と重なっているようにも思えます。
この2つの図から分かる通り、人やお金が集まる地域や交通網が発達している地域を除き、日本全体の高齢化は間違いなく現実であるようです。
桜の花が散り落ち、若葉が出てきて桜の見頃が終わりかけているようにも見え、高齢化の日本と重なって思えてなりません。
参照:総務省統計局「平成27年国勢調査に関する地域メッシュ統計」
ここまででは、「やっぱり働ける日本人が少ないから外国人を採用する企業が増えているのか」というように思えますが、そういうわけでもありません。
実は、日本の完全失業者数は約160万人にも上ります。
更に、定年退職をされた元気な高齢者等、まだまだ働くことができるはずの方たちを採用することができれば、人手不足は間違いなく緩和されることでしょう。
にもかかわらず、国を挙げて外国人労働者の採用を推進する動きが高まっているのはなぜなのでしょうか?
参照:総務省統計局「労働局調査(基本主計)平成30年12月分
日本人失業者数と外国人労働者数はどちらも増加している?
約160万人もの失業者がいるにも関わらず人材不足となっている原因には、
企業側のハードルが高い、求人側の希望が高い、そもそも求人者が本気で働きたいと思っていないなどがあります。
また、若い世代の労働に対する考え方や教育方針が変わってきており、その違いから昔ながらの採用を続けている企業には人が集まらない傾向にあるということも。
例えば、現在の20代から30代が持つ代表的な仕事観として、
- 一生涯同じ会社で働けると思っていない。
- 定職に就く必要性を感じない。
- 自分の時間を大切にしたい。
- 残業や休日出勤は“悪”だと考える。
- 嫌な思いを我慢して続ける必要はない。
- “パワハラ”、“セクハラ”、“ブラック企業”等は、“悪”であり、訴えるもの。
- (みなし残業を含めた)見た目の給与が高い会社を選ぶ。
- 売り手市場のため、とりあえず将来の目的がないまま内定した会社に入る。
- 社内では優しく接してほしいが、プライベートはプライベート。
- 最悪、正社員でなくてもアルバイトで一人分なら食べていけると考える。
このようなものが挙げられます。
働き方改革という言葉が浸透し、考え方を変えざるを得ない状況になってきてはいるものの、まだまだ一部の方の意識が変わっていないことがギャップとなり、企業内での上司と部下の考え方にねじれが起きているのが現状です。
こういった事情から募集をかけても日本人の求人が集まらなかったり、採用しても長続きせずにすぐに辞めてしまったりするため、採用難が深刻化しています。
また、企業から見た際には
- 長年働いてくれたベテランが定年で多く退社していくから。
- 日本人よりもまじめでコツコツと働いてくれる外国人がいるから。
- 技能実習制度を利用することで安定的かつ定期的に働いてくれるから。
- 海外の支店や工場、合弁会社などを持っているから。
- 海外とのビジネスでの取引があるため、外国語が必要だから。
- これから海外に進出するために外国人が必要だから。
- 外国人の方がその職種に長けているから。
- 外国人は、安く使えるから。
などの事情もあるため、外国人材への需要が高まっているのです。
さらには、東南アジアを中心に労働を目的として来日する外国人が増えていることから、国としても「働く意欲のある人材を確保すべき」となり、
“特定技能”、“介護”、その他ほとんどの留学生が利用する“特定活動”等のような、(職種や時間の制限はあるものの)労働しやすい在留資格が増えて行きました。
一部ではありますが、こうした様々な要因から、外国人材が働ける機会と、その人数が増え続けているのです。
まとめ
外国人の採用を考えるにあたり、まずは日本の労働力人口と人手不足の側面という足元の部分から見たうえで進めたいと思い、このようなお話をしました。
次回からは、実際に外国人を採用する際の注意点や在留資格について、またどうしたら実際に雇用し、定着をしていけるかなどをお話していきたいと思います。
私は人材派遣、人材紹介業という仕事柄、毎日数か国の外国人たちとともに働き、彼らが採用されるように手助けをしています。
専門学校にて外国人へのキャリアアップ教育を担当しており、かつ自社の派遣社員と契約先企業様との関係等を常日頃見ているため、採用する側の苦労と失敗、教育とコミュニケーションの大事さなどを日々感じています。
外国人育成・定着PROでは、そうした経験も交えつつ外国人の採用に関するコンサルティングをおこなっておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。