【外国人採用の現場から見えること】②考え方の“違い”と“乗り越え方”
前回は、日本の労働力人口や日本に在留している外国の方(以下「外国人」とします)のデータを基に、なぜ日本人だけでは人手不足を招いているのかについてお話しました。
今回はいよいよ求職側(外国人)と求人側(企業)、それぞれの意見について見ていきます。
コンテンツ
日本人同士でさえ差がある求職側と求人側の理想
まずは『“求職側”と“求人側”が考える理想』について、日本人と日本企業での場合を見て行きたいと思います。
【求職側の理想】
仕事に就く上で、あなたなら会社に何を求めますか?
一般的に言われている意見には、以下のようなものがあります。
・安定 ・給与 ・やりがい
・人間関係 ・福利厚生 ・自己実現
・大手企業 ・私生活優先 ・オフィス環境
・専門職 ・ゼネラリスト ・ホワイト企業
・自立のため ・将来性 ・プライド
・出世のため ・結婚のため ・休日の多さ 等
・社会貢献度 ・希望の勤務地
もちろん各人の仕事への姿勢にもよりますが、若い世代では8割方が「私生活優先」と思っているとのデータもあります。将来どうなるかよりも、今をいかに楽しむかが優先されているようです。
参考:♯SHIFT 就活性の理想の働き方は「私生活優先」が8割「ブラック企業」報道の影響受け
【求人側の理想】
では企業側の理想はどうでしょうか?
・積極性 ・緻密性 ・機転
・柔軟性 ・機敏性 ・リーダーシップ
・外交性 ・配慮 ・サービス精神
・度胸 ・常識 ・基本処理能力
・価値観 ・資格 ・スキル
・実行力 ・計画性 ・ストレスコントロール 等
・協調性 ・傾聴力
企業側としては、受け身ではなく積極的に自ら動いて仕事をこなすタイプを好む傾向があります。
日本の企業では、基本的に新卒を採用し、数か月から数年かけて教育をし、長年働いてくれることを考えて採用プランを立てています。
それだけのコストをかけて育てるわけですから、企業側としては少しでも早く成長してもらいたという思いが強いのです。
そのため、いくら頭が良くてもいつまでたっても受け身で指示待ちな人材より、積極的に仕事を取りに行くハングリー精神を持った人が欲しいところでしょう。
と、いうのが、日本人と日本企業それぞれの持つ理想です。
これらが完全にマッチする人と企業は少ないと思います。また、たとえマッチしたとしても、人間関係でのトラブルや、希望でない部署に就いたことでモチベーションが下がる等、問題は尽きません。
日本人同士でさえこのような問題がある中、外国人の採用ともなるとさらに大きな違いが出てきます。
さらに文化によるミスマッチが生じる
例えば、外国人は基本的に、“自分が学んだ知識ややりたい部署で仕事をするため”に仕事をします。そのため、ゼネラリスト(広い範囲の知識や能力を持つ人)を育てる傾向が強い日本の企業にはそもそも向いていません。
以前、中国人の方が日本の企業に入社した際、数年経って部署異動になったことをご両親に伝えました。するとご両親は悲しみ、「いつでも帰ってきていいんだよ。」と仰ったそうです。
“以前の部署で使い物にならなかったから、別の部署に遷された”と思われたとのこと。私たち日本人にはあまり無い感覚ですね。
それほどまでに、学校で学んだ知識を活かした仕事をし、さらに専門性を磨いてプロフェッショナルを目指す傾向が強いのです。
そのため、会社内での昇進よりも、その分野においてのステップアップが重要視され、それを狙って転職を繰り返すことが当たり前なのです。
また、アジア圏の学生はアルバイトの経験が無い状態で留学に来ることが多いです。学生は勉強をするものであり、働くのは学生が終わってからするものと考えているためです。
したがって、アルバイトをする留学生たちは、日本の商習慣の前に、「そもそも働くとは…?」という状態でスタートしていると考えて差し支えありません。
さらに、日本語はハイコンテクスト(高文脈依存)文化が強く、いわゆる阿吽の呼吸と言われるような“相手が何を求めているのか”を察する必要があるコミュニケーション方法を用いています。
ですので、日本語という言語がそれなりにできるというだけでは意思の疎通がとりにくいのです。
しかし日本人からすると無意識におこなっている部分も多いため、「簡単な言葉を使っているつもりなのに伝わっていない」ということが多々起きてしまうのです。
(※ハイコンテクストについても後程詳しく紹介したいと思います。)
故に、こちらの思うように働いてもらう、長く働いてもらうには、企業側による努力が必要不可欠なのです。
違いを乗り越えるために
ここで最も重要なのは、『お互いに理解をし合うこと』です。
国によって、または同じ国でも地域によって、性格や肌の色、文化の違う国が多数存在します。小さな島国と言われる日本でさえ、北海道と沖縄では異なる部分が多いですよね。
それら全てを理解することは難しいにしても、日本人が得意とする『相手を思う気持ち』で接することが重要です。
そのためにできることの一案として、採用の管理責任者の方には、採用をする前に求職者の出身地に行き実際に見て肌で感じてくることをお勧めいたします。
観光地だけでなく地元の方が暮らす地域で、どのような町で、どれくらいの物価で、どんなものを食べているかなどを見てくるだけでも、採用後の接し方が違ってきます。
また、入社後共に働く既存社員の方々に対して、新しく入社する方の国と日本との文化や労働に関する考え方の違い、異国の地に一人で暮らす気持ちなども伝えるべきでしょう。
外国人採用が上手くいっている企業は、一社員として以上に相手に寄り添い、家族的、友達的な感覚で接しています。
そういった付き合い方をしていると、心に余裕が生まれ、文化の違いによるトラブルが起きても動じづらくなります。また、こちらが本気で注意する必要があるときに相手もそれを分かってくれ、段々と日本の商習慣を覚えていくこととなります。
すると結果的にその外国人は長年勤めてくれることとなり、また新たに外国人を採用した際のリーダーとしても働いてくれることでしょう。
ただし、いくら日本語が堪能になったり日本の文化を理解したりしたとしても、外国人には外国人の考え方に合ったしっかりとしたステップアップの計画や明確な目標、達成時のインセンティブを、企業側が用意しなければなりません。
まとめ
企業側からすると、企業側が求める像に当てはまり職務を全うできる人を選ぶ必要があるだけで、日本人であろうと外国人であろうと関係ないと思われるかもしれません。
人手不足の解消という理由のみで採用する場合は必要ないのかもしれませんが、日本語と母国語ができるということは、その国とのやり取りや現地の人たちとの懸け橋となってくれる強い味方になります。
ただその国の言葉を話すことができる日本人(それだけでももちろんすごいことではありますが)を雇うより、文化や考え方に精通している分、大きな戦力として育てることができることでしょう。
そのあたりのメリットも踏まえ、日本で就職しようとする外国人には日本人には無い“言葉の壁”と“文化・習慣・歴史”の違いがあるということを、しっかりと肝に銘じておく必要があるのではないでしょうか。
次回は、在留資格の種類についてと在留資格の取り方についてお話をしたいと思います。