【外国人採用の現場から見えること】③在留資格の種類と目的について
前回は、“求職側”と“求人側”が考える理想についてと、文化の違いによるハードルの乗り越え方をお伝えしました。
前回:【外国人採用の現場から見えること】②考え方の“違い”と“乗り越え方”
今回は、実際に採用を考えた場合に必要となる『資格』について、種類とその目的等をご説明していきます。
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就労するための在留資格とは?
外国人が日本で働くには、必ず『在留資格』というものが必要となります。
これは日本で活動するための許可証のことです。
よく『ビザ』と混同されますが、それとはまた別のものとなります。
さらに、日本に3ヶ月以上滞在する場合は、『在留カード』を必ず携帯しないとなりません。
まずはこの3つの概要と違いについて知った上で、外国人の採用について考えてみたいと思います。
在留資格
在留資格とは、外国人が日本に滞在するために必要な資格のことです。
33種類あり、その資格の種類ごとに日本でできることが決められています。
大きく分けると“活動類型資格”と“地位等類型資格”の2つです。
活動類型資格は、定められた活動をおこなうことによって日本に在留することが出来る資格です。
その外国人の学歴や職歴から日本に必要だと判断され、特定の職に就く人材として在留の許可を与えられるものなので、その活動以外はおこなえません。
地位等類型資格は、定められた身分又は地位を有するものとして日本に在留することが出来る資格です。
例えば、日本人と結婚した方なら“日本人の配偶者等”という在留資格が与えられます。その他、永住者や定住者を証明する資格もあります。
どの在留資格にも有効期限がありますので、その期限を過ぎて日本に滞在した場合には、不法滞在となります。
また、有効期限が残っていても、犯罪や在留資格外の活動、在留資格を不正な手段によって得た場合、離婚した場合などは、在留資格の取り消しとなります。
なお、就労目的の在留資格(“技術・人文知識・国際業務”など)を持っていた方が、勤めていた会社を退職したのち、就職活動をおこなわず3ヶ月以上就職をしない場合にも在留資格の取り消し対象となります。
ビザ(査証)
ビザとは、外国にある日本の大使館や領事館が、外国人が持っているパスポート(旅券)が有効であるかを“確認”し、日本に入国しても支障が無いという“推薦”をしたことを示すものです。
入国についての推薦状ですので、何回も使用できるビザもありますが、基本的には到着した時点で役目が終わります。
在留カード
在留カードとは、中長期間(3ヶ月以上)の在留資格を持つ外国人に対して、その外国人が適法に在留できる者だと証明する証しとして交付されます。
旅行者と変わらないような短期間の外国人にまで発行するのは効率的でないため、3ヶ月以下の短期滞在ビザで入国をする外国人には交付されません。
メインとなる就労可能な3つの“在留資格”について
33種類ある在留資格の中で主に使われているのは、“技術・人文知識・国際業務”、“技能実習制度”、“特定技能”の3つです。
労働を希望する外国人の学歴や職歴、受け入れる企業側の仕事内容などによって取得できる在留資格が異なります。
①技術・人文知識・国際情報
これは、日本の企業が外国人を正社員として採用する際に取得する就労資格です。
この資格の基本的な要件(必要な条件)は、
・母国または日本で4年生以上の大学を卒業していること
・日本の専門学校を卒業し専門士または高度専門士の称号を付与されていること
のどちらかとなります。
その専門的に学んだ分野と就労先の仕事内容が同一、または関係性が無いと在留資格は認められません。
また、一般的な日本人でもできる仕事に外国人を雇用する必要はないことから、単純労働は認められません。
そのため、特別な技術を要する仕事や、専門的な知識を活用する仕事、経験のある管理者、通訳・翻訳などの高度な人材でなければなりません。
具体的な職種としては以下のものが挙げられます。
●技術
“理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術を要する業務”で、システムエンジニアや機械工学などの技術者、土木及び建築における研究開発・解析・構造設計関連の従事者、などが対象となります。
●人文知識
“法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する知識を要する業務”で、経理、人事、総務、法務、マーケティング、広報、貿易に関する海外との取引業務、コンサルティングなど、文系の社会科学分野も含む仕事が対象となります。
●国際業務
“外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務”で、通訳、翻訳、語学の講師、服飾や広告などのデザイナー、通訳が主業となるホテルのフロントなどが対象となります。
参考:法務省 日本での活動内容に応じた資料【在留資格認定証明書交付申請】①②
②技能実習制度
よく「労働目的で技能実習制度を利用したい」と問合せを受けることがあります。
しかし、技能実習制度の目的・趣旨は、“我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという、国際協力の推進”です。
そのため、実習計画の提出や日本語の教育、習熟度をはかる試験などがあり、決められた業務を通して実習することが条件となります。
しかし、日本企業側で「研修をさせて勉強をしているのだから給料は安くてもいい」だとか、「最低賃金で働かせることができる在留資格だ」などと誤った認識をしていることがあり、世間を騒がせたり問題視されたりということが一部で発生しております。
採用側は、技能実習制度の範囲内の、実習を目的とした仕事内容と教育が必要となることを理解した上で採用する必要があります。
③特定技能
2019年4月から新しい在留資格として誕生したのが、特定技能です。
この資格は、日本の深刻な人手不足の解消を目的として外国から労働者を受け入れる制度です。
そのため人手不足が深刻な以下の14職種に限定し、“相当程度の知識又は経験を必要とする技能”と“日本語能力”を認められる外国人に対して、認められた業務範囲内での単純労働も可能とした資格です。
・介護分野
・ビルクリーニング分野
・素形材産業分野
・産業機械製造業分野
・電気・電子情報関連産業分野
・建設分野
・造船・舶用工業分野
・自動車整備分野
・航空分野
・宿泊分野
・農業分野
・漁業分野
・飲食料品製造業分野
・外食業分野
特定技能の資格を得るためには、日本語能力試験4級(相当)以上の日本語の能力を持ち、指定された業種の技能試験に合格する必要があります。
また、技能実習生として日本で3年の実習を修了し、2号試験に合格をしている方や、
またはさらに2年間の実習を積み、3号の実習を修了した方は、無試験で技能実習制度と同じ職種で就労することが可能となります。
先日始まったばかりの資格ですが、日本ではすでに宿泊分野と外食業分野の技能試験が実施されており、合格者も出ております。
また、フィリピンでは海外で初の介護分野の技能試験が実施されました。
しかし、まだ3分野での試験が実施されただけで、残りの11職種に関しては日程も決定されておりません。海外と日本との2国間協定も結ばれていない状況です(フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴルのみ合意済み〈2019年4月現在〉)。
まとめ
いかがでしたしょうか。
就労ができる範囲や内容は細かく決まっていますので、まずは資格自体が取れるかどうかをきちんと調べたり、どの資格で採用をするべきかを決めてから行動をしないと、時間とお金が余分にかかってしまうことがあります。
採用を検討なさる際は、ネットや同業他社からの話だけを参考に悩むのではなく、弊社のような外国人を多く扱ってきた会社や外国人の資格申請を取り次ぐ行政書士にご相談いただければ幸いです。
次回は、実際の採用の流れと資格申請についてお伝えいたします。