【外国人採用の現場から見えること】④在留資格ごとの採用フローについて
前回は、実際に採用を考えた場合にまず必要となる在留資格について、種類とその目的等をご説明しました。
今回は、在留資格ごとの採用フローや、どこへ相談する必要があるのかをご説明します。
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在留資格によって変わる窓口
外国人が日本で働くために必要な『在留資格』ですが、これには33もの種類があり、その種類ごとに採用時の手続きや相談先が変わってきます。
また、採用する外国人が“すでに日本国内にいるのか”、それとも“海外から呼び寄せるのか”によっても採用の手続きは変わってきます。
ここでは、例としてフルタイム(正規雇用)と同等に働くことのできる在留資格を取り上げてみます。
① 「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」
地位等類型資格であるこれら4つを持っている方は、就労に制限が無いため日本人と同じ働き方ができます。
採用の流れもなんら変わりはありませんので、採用を検討する場合の相談窓口は、日本人と同じ人材紹介会社等になります。
日本語が堪能な方が多いため、通常の求人広告に「外国人歓迎」や「外国人可」など付け加えれば応募されるケースもあります。
なお、現在この資格を持っている外国人は約77万人います。
参考:平成30年末現在における在留外国人数について(法務省)
② 「技術・人文知識・国際情報」
特定の分野に関する知識や技術を必要とする業務を予定している場合、この在留資格を取得してもらう、もしくは保有している方を雇用するケースが多いです。
海外から人材を呼び寄せて雇用する場合、職務内容に専門性があり、学歴または職歴要件を満たすことを確認の上、「技術・人文知識・国際業務」を取得してもらう必要があります。
国内外の大学または日本の専門学校を卒業した、業務に必要な知識と経験を持つ留学生を新卒で採用する場合、在留資格の変更が必要となります。
卒業の数ヶ月前から変更申請を行わないと4月1日からの就業に間に合いませんのでご注意ください。
いずれにせよ、その専門的に学んだ分野と就労先の仕事内容が同一、または関係性が無いと在留資格が認められないため、日本人を採用する場合のように学歴や経験を問わずに採用することはできません。
この場合の主な相談窓口は、在留資格認定許可や在留資格の変更などの行政手続きと外国人の集客ができる人材紹介会社となります。
③ 「技能実習生」
これは就労を目的とした在留資格ではありませんが、フルタイムでの就業が可能なため多くの企業で取り入れられています。
ただし、実習計画の提出や日本語の教育、習熟度をはかる試験などがあり、決められた業務を通して実習することが条件となります。
技能実習生を受け入れるには、企業が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式と、実習生を管理・支援する“監理団体”と契約をして実習実施者となる方式があります。
業種や職種、企業の規模などによって受け入れの可否がありますので、まずはJITCO(公益社団法人 国際研修協力機構)に相談をすることをお勧めいたします。
JITCOは、技能実習生の受入れ支援から手続き支援、送出し支援、人材育成支援、実習生保護支援までを行っている機関です。
④ 「特定技能」
2019年4月1日から新設された在留資格で、「技術・人文知識・国際情報」では許されない単純労働も認められるものです。(“相当程度の知識又は経験を必要とする技能”と“日本語能力”を認められる外国人に対して、認められた業務範囲内での単純労働も可能としているもの。)
具体的には、次の分野での受け入れが認められています。
①介護、②ビルクリーニング、③素形材産業、④産業機械製造業、⑤電気・電子情報関連産業、⑥建設、⑦造船・舶用工業、⑧自動車整備、⑨航空、⑩宿泊、⑪農業、⑫漁業、⑬飲食料品製造業、⑭外食業
※⑥⑦は特定技能2号のみ受入れ可
登録支援機関で有料人材紹介事業をしている企業に相談をすると、人材の確保から書類申請、入職後の支援までワンストップで行えます。
参考:登録支援機関登録簿
⑤ 「特定活動 46号」
2019年5月30日に告示されたばかりの在留資格で、「技術・人文知識・国際情報」と同様に就労を目的としてはいるものの、単純作業(飲食・宿泊・製造業の現場での業務)も可能なものです。
取得には、
・日本の大学(四年制)または大学院を卒業
・N1(日本語能力試験1級)レベル
・日本人と同程度以上の報酬
・学校で学んだ知識に関する業務が見込まれる
・日本語でのコミュニケーションが求められる業務である
等が確認できる必要があります。
これは外国人留学生の就職先を拡大すべく始まった制度です。この在留資格を持っている方が転職をする際には資格の変更許可申請が必要となります。つまり、新卒の採用しかできませんのでご注意ください。
ただ、要件を満たせば、計画書を作成したり機関と契約を結んだりという手間が必要なく、一般的な被雇用者として扱うことが出来るというメリットもあります。
採用を考える際は、外国人を扱う有料職業紹介事業者に相談をしましょう。
それぞれの採用フローついて
上記在留資格で相談窓口が違ってきますが、一般的にどのような流れと期間がかかるのかをあげてみます。
※ただし、正確な期間は各地域の入管や申請時期によって大きく変動します。
① 「永住者、定住者」は日本人と同様に
働き方と同様に、採用フローも日本人と同じです。
面接して採用となれば、当日からでも入職が可能です。
② 「技術・人文知識・国際情報」はシチュエーションによって
海外から直接採用する場合と国内に在留している場合で時期が変わってきます。
A. 海外から直接受け入れる場合
外国人材を扱う有料職業紹介事業者や知人の紹介によって海外から人材を受け入れる場合、まずは履歴書・職務経歴書から書類審査をします。
その後、直接現地に行ったり、Skypeなどを利用したりして面接を行います。初めて外国人を採用する場合や複数名採用をする場合は、現地に直接行って面接をすることをお勧めします。
また、筆記試験や実技試験を行い、知識やレベルを確認することも問題はありませんが、試験慣れをしている日本人と同じように基本能力を測ろうとするのはお勧めしません。仕事をするうえで必要な能力があるのかを判断することに注視しましょう。
期間は、ここまで2週間~3ヶ月程度かかるでしょう。
その後、内定となれば在留資格の申請を行います。
職種や人物、受け入れ企業によって期間は変わりますが、2週間~6か月は見ておきましょう。
B. 国内の留学生を採用する場合
国内で留学生を採用する場合も履歴書から選考を行い、面接を重ねます。
留学中に日本語を学んでいるはずなので、日本語の能力もある程度確認しておきましょう。
基本的には日本でのアルバイト経験がある方が多いですが、母国では就労経験がないという方が多いので注意が必要です(特に東南アジア)。
期間は、日本人の新卒採用と同様と考えてよく、2週間~3か月くらいが通常です。
その後、在留資格の変更に2週間~3か月ほどかかります。それ以上かかることもあるため、4月1日からの採用なのであれば、年末または年始までに申請を出すことをお勧めします。
C. 国内ですでに「技・人・国」の在留資格を持つ転職者の場合
在留資格の変更は必要ありませんが、入職してから14日以内に「所属機関の変更の届け出」を提出する必要があります。
その他は日本人と同じと考えていいので、数日~2ヶ月程度で入職できます。
また、在留期間の期限が短いと「在留期間更新許可申請」をしないといけないため、最低でも6か月の在留期間が残っている方を採用する企業が多いです。
③ 「技能実習生」の場合は長期戦を覚悟して
技能実習生は、監理団体と契約をしたのち、面接(現地またはSkypeなどを利用)をして、実習生の候補者を選びます。
ここまで約1ヶ月~3ヶ月かかります。
その後、現地にて約3ヶ月~6か月間かけて日本語や日本の文化・習慣などを勉強したのち、在留資格の申請をします。
そこから1~3ヶ月後に入国となりますが、さらに1か月間の講習を受けてから入職となります。
④ 「特定技能」の場合もシチュエーションによって
A. 国内にいる留学生や家族滞在者などが「特定技能」に変更する場合
国内にいる対象は、日本語能力試験N4以上の証明と、就労しようとする職種の特定技能評価試験に合格していることが条件となります。
登録支援機関を通じて対象者を紹介してもらい、選考に数日~1ヶ月。
そこから②Bと同様の手続きが必要となります。
B. 技能実習2号修了者を海外から採用する場合
「技能実習生」として3年以上滞在している実習2号又は3号の修了者は、日本語能力試験も特定技能評価試験も免除となります。
直接受け入れ機関となる企業へ応募し、選考を経て、②Aと同様の申請を登録支援機関の支援のもと行い、入職に至ります。
C. 海外にて特定技能評価試験を受験してから採用される場合
海外に住んでいる者が特定技能で来日を希望する場合は、④Aと同様に日本語能力試験N4以上と特定技能評価試験合格を証明するものを持って、就職活動を行います。
そのため、登録支援機関の許可を持った企業、団体、個人または外国人を扱う有料職業紹介事業者にて「特定技能」の人材を募集してもらい、選考に進みます。
あとは、②Aと同様のステップを登録支援機関と進め、入職に至ります。
※雇用をする受け入れ機関(企業)が、登録支援機関を必要としない場合は、利用せずに採用することもできます。
⑤ 「特定活動 46号」の場合はほぼ日本人と同様に
日本の大学または大学院に在学をしながら就職活動を行っていますので、日本人の新卒採用と同じフローとなります。
日本人を対象にしている時と同様に募集することも可能ですし、外国人向けの就職セミナーや就職説明会に参加するなどして母集団を増やすこともできます。
プロセス的には、②Bと同様となります。
まとめ
いかがでしょうか。
海外からか国内からかで在留資格を用意するまでのプロセスが変わり、さらにその種類によって関わる業者や団体が変わります。
まずはどの在留資格で受け入れ、どの業者に相談をして、手続きを進めていくのかを決めることが初めの一歩となります。
在留資格によって入国するまでにかかる期間やステップが違いますので、各企業や団体などに相談と確認をしつつ、時間に余裕をもって入国準備を進めましょう。
また、初めて外国人を受け入れる際は、通常必要な書類以外にも提出を求められるものがあるため、何回も追加書類の提出を求められる場合があります。
在留資格によって様々な書類形式や提出書類がありますので、ネットや同業他社からの話だけで進めず、ぜひ弊社のような外国人を多く扱ってきた会社や、外国人の資格申請を取り次ぐ行政書士、JITCOにご相談のうえ採用をご検討いただければ幸いです。